
収益物件の空室が目立つときに安易に賃料を下げるべきではない理由
収益物件を保有しているオーナーにとって、空室が続くことは非常に大きな悩みの種です。物件の入居率が下がれば、それに比例して家賃収入も減少し、収支が悪化してしまいます。そのような状況に陥ったとき、「賃料を下げれば、きっとすぐに入居者が見つかるのではないか」と考え、反射的に賃料を引き下げる判断をしてしまうオーナーも少なくありません。
しかし、賃料を下げるという対処法は、本来であれば“最後の手段”であるべきです。 というのも、賃料を引き下げることには取り返しのつかない3つの大きな弊害があるからです。このリスクを正しく理解せずに判断を下してしまうと、物件の価値やオーナー自身の資産形成に大きな影響を及ぼす可能性があります。
1. 賃料を下げるとオーナーの収入が確実に減少する
家賃収入は、収益物件におけるオーナーの主たる収入源です。空室対策として賃料を下げてしまうと、そのまま収入が減ってしまい、月々の運営資金に大きく影響します。たとえば1万円の賃料ダウンを行った場合、年間で見ると12万円の収益減少です。複数戸で同じような調整を行えば、その損失額はさらに拡大します。
収入が減ってしまえば、修繕費用や税金の支払い、管理会社への報酬など、必要な運営コストを賄うのが困難になる可能性があります。収益性の低下は、物件の維持管理そのものを難しくする負の連鎖につながるのです。
2. 賃料を下げることで物件自体の資産価値が下がる
不動産は、「どれだけの収益が見込めるか」によって市場価値が大きく変動します。これは収益還元法と呼ばれる考え方に基づくもので、投資家や不動産会社が物件の価値を判断する際に、賃料収入を重要な指標として用いているためです。
つまり、賃料が下がる=物件が生み出す収益が減る=資産価値が下がるという図式になります。いざ物件を売却しようと考えたとき、「以前よりも安くしか売れない」という事態に陥る可能性が高くなります。
一時的な空室を埋めるための安易な賃料引き下げが、将来的な売却戦略において大きな損失を生み出す原因となるのです。
3. 賃料は一度下げると、元に戻すのが極めて難しい
不動産の賃料は、上げるよりも下げる方が簡単です。しかし、一度下げてしまった賃料を再度引き上げることは、非常に難しいという現実があります。
契約更新時に家賃を値上げしようとすると、入居者とのトラブルに発展する可能性があり、裁判にまで発展するケースもあります。過去には、賃料の値上げをめぐる裁判でオーナー側の主張が退けられた事例も少なくありません。
また、仮に空室時点で新たな入居者に高い賃料を提示しようとしても、周囲に「この物件の家賃は以前よりも安い」という情報が広がってしまえば、新しい条件での募集が難航するリスクもあります。
このように、賃料を下げることは一時的な解決に見えて、実は長期的に深刻なダメージを残すリスクをはらんでいるのです。
賃料を下げる前に見直すべき「空室の根本原因」とは?
では、収益物件に空室が目立ってきたとき、オーナーはどう対処すべきなのでしょうか。
重要なのは、まず「なぜ空室が発生しているのか」を正しく分析することです。
空室の原因は、必ずしも家賃の高さとは限りません。むしろ、他の要因によって空室が続いているケースの方が多く見受けられます。
●物件の魅力が正しく伝わっていない可能性
内装や設備がリニューアルされていても、それが適切に広告や写真で伝わっていなければ、入居希望者の目に留まりません。掲載媒体や広告手法を見直すことで、物件の認知度を高め、入居につながるケースがあります。
「魅力はあるのに、伝え方が悪くて選ばれていない」状態は、家賃を下げなくても改善できる可能性があるのです。
●周辺環境やニーズの変化を見逃していないか
近隣に新しい商業施設や交通インフラが整備されたことにより、ターゲットとなる入居者層のニーズが変化しているかもしれません。逆に、治安や利便性が悪化して敬遠されている可能性もあります。
こうした変化に合わせてリフォームの方向性や募集条件を見直すことで、空室改善に繋がる可能性があります。
●共用部や清掃状態の印象はどうか
エントランスや共有部の清掃が行き届いていない場合、「管理がずさん」と判断され、内見者が敬遠することがあります。建物の第一印象は意外と入居判断に影響を与える要素です。
清掃体制の見直しや簡単な美装によってイメージを向上させるだけでも、空室対策になることがあります。
賃料を下げる前にすべきこと、それでも悩んだら
空室が目立ってくると、どうしても焦って賃料を下げたくなる気持ちが出てくるものです。
しかし、賃料を下げることによるデメリットは非常に大きく、将来の資産価値や収益性に長く影響を及ぼす判断です。
まずは、物件の状況や周辺環境、広告戦略などを冷静に見直し、「本当に家賃を下げるしか方法がないのか」を慎重に検討することが重要です。
もし一人での判断が難しい場合は、スペースエンタープライズ株式会社にお気軽にご相談ください。
物件の現状を多角的に分析し、家賃以外の空室対策や、売却を含めた長期的な選択肢をご提案いたします。オーナー様にとって最善の道を一緒に考えてまいります。