
収益物件を売却する際、築年数は大きな影響を与える要因の一つです。不動産の価値は時間の経過とともに変動し、築年数が増すほど価格が下がる傾向にあります。しかし、単に築年数が古いからといって売却が不利になるわけではありません。本記事では、築年数が収益物件の売却価格にどのような影響を与えるのか、価格を左右する4つのポイントとともに解説します。
1. 減価償却と築年数の関係
収益物件の価格は、建物の減価償却と密接に関わっています。日本の税法では、建物の耐用年数が定められており、
- 木造・軽量鉄骨造:22年
- 鉄筋コンクリート造(RC造):47年
- 鉄骨造:19年または34年(厚さによる)
とされています。築年数が耐用年数を超えると、建物の帳簿上の価値はゼロになり、金融機関からの融資が受けづらくなることがあります。このため、築年数が古い物件ほど、買い手が現金購入を検討するケースが増え、売却価格が下がりやすくなります。
2. 融資のしやすさと売却価格への影響
築年数が経過すると、金融機関の融資基準が厳しくなり、買主の購入資金調達が難しくなります。一般的に、金融機関は耐用年数以内の物件に対して積極的に融資を行いますが、耐用年数を超えた物件では融資額が少なくなり、買主の自己資金の割合が増えるため、購入をためらうケースが増えます。
ただし、
- 収益性が高い物件
- 立地条件が優れている物件
- リノベーションが行われている物件
は、築年数が古くても融資を受けられる可能性があり、売却価格の下落を抑えることができます。
3. 築年数と賃貸需要の関係
築年数が古い物件は、賃貸需要に影響を及ぼすことがあります。
- 築浅物件(築10年以内):設備が新しく、賃貸需要が高いため、高い家賃での募集が可能。
- 築10年以上の物件:競争が激しくなり、家賃の値下げやリフォームによる差別化が必要。
- 築30年以上の物件:賃貸需要が低下し、空室リスクが高まる。ただし、古民家ブームやデザイナーズリノベーションによって価値を高めることも可能。
リフォームやリノベーションを施すことで、築年数が古くても競争力を維持し、売却価格の下落を防ぐことができます。
4. 築年数と売却戦略
築年数が古い物件を売却する際には、適切な戦略を立てることが重要です。
① ターゲット層を明確にする
- 築浅物件(~10年):サラリーマン投資家や初めて不動産投資をする人をターゲットに。
- 築10年以上の物件:利回りを重視する投資家向けに訴求。
- 築30年以上の物件:現金購入が可能な投資家やリノベーション前提の買主をターゲットに。
② 適切なリフォーム・リノベーションを実施
- 築年数が古い物件は、設備の老朽化が進んでいるため、内装や設備をリニューアルすることで売却価格を向上させることができます。
- ただし、リフォーム費用が高額になると投資回収が難しくなるため、必要最低限の改修にとどめることが重要です。
③ 価格設定を適切に行う
- 市場価格を調査し、相場よりも高すぎない価格設定を行う。
- 「オーナーチェンジ物件」として、安定した家賃収入があることを強調する。
④ 税制優遇を活用する
- 長期譲渡所得の適用:不動産を5年以上保有している場合、売却時の譲渡所得税率が低くなる。
- 減価償却の活用:築年数が古い物件は、減価償却費を計上しやすく、税務上のメリットがある。
まとめ
収益物件の売却において築年数は重要な要素ですが、それだけで売却の成功・失敗が決まるわけではありません。融資のしやすさ、賃貸需要、リノベーションの有無など、さまざまな要因を考慮することで、築年数が古くても魅力的な物件として売却することが可能です。
物件ごとの特性を見極め、適切な戦略を立てることで、より有利な条件で売却を進めることができるでしょう。